板橋駅からJR埼京線上り電車に乗り込もうとしていた会社員の吉田圭さん(44歳)が、女性の叫び声を聞いたのは、6月5日午前8時ごろだ。
ホームで会社勤めらしい若い女性が、中年男性のベルトをつかんで歩いていた。
ラッシュアワーのこの時間、埼京線はいつもすし詰めだ。吉田さんも、体の前にリュックを回し、両手を上げた「ホールドアップ」の体勢で、背中から体を押し込んだところだった。
女性が駅員へ痴漢を引き渡そうとした時、吉田さんは「逃げる」とピンときたという。
案の定、痴漢は駅員を振り切り、全速力で階段と反対側、ホームの端に向かって走り出した。
「線路へ降り、線路外へ逃れるつもりだ」
吉田さんはそう考え、走って追いかけた。同時に周囲に向かって「転ばせろ!」と叫んだ。
前日にSNSで、痴漢に足を引っかけ転ばせて捕まえた動画を見ていたからだ。
すると会社員風の男性が、痴漢の前に足を出してくれた。
よろめいて速度が落ちたところに、高校時代アメフト部に所属していた吉田さんがタックルした。
痴漢は無事捕らえたが、無事でなかったのは吉田さんの体だ。
右ひざをホームに強打した上に、痴漢に蹴られて服が破れ、左の脇腹も擦りむいて出血した。
医務室に連れていかれたが、立ち上がれず救急搬送された。
ひざは腫れあがり、救急隊員や看護師に痴漢本人と間違われ、冷たい扱いを受けるという「おまけ」までついた。
1カ月で治ると言われたが、2週間ほどすると、痛みがぶり返した。MRI撮影で、改めて骨挫傷、全治3カ月と診断された。
吉田さんは今年4月、執行役員として現在の勤め先に転職したばかりで、有給休暇も発生していなかった。
社長は「気にしないで休んで」と言ってくれたが、「そう言われると、休むのが心苦しくなって…。入社2カ月で、一番頑張らなければいけない時期でもあった」(吉田さん)。このため、休みは取らなかった。
勤め先は、最寄り駅から徒歩10分程度だが、歩行がままならないため25分くらいかかってしまう。
週1回、朝7時からの朝会前日は、遅刻しないよう近くのホテルに宿泊した。医療費、宿泊代など出費もかさんだ。
だが吉田さんは「けがをしたのが僕のような、オフィスワーカーで良かった」と話す。
「運転手など、体を使った仕事の人が同じ目に遭ったら、労災も下りず生活が立ち行かなくなるかもしれない。無職やアルバイトの人にとっても、経済的な負担は大きいだろう」
警視庁によると、一般人が被疑者を取り押さえる時にけがをしたり、障害が残ったりした場合、治療費などを支払う制度がある。
ただ制度利用の手続きは、所轄の警察署長の報告によって始まると定められており、けが人自身は申請できない。
吉田さんが所轄署に問い合わせたところ、制度を使えるか検討しているが、「補償が支払われるかはまだ分からない」と回答されたという。
吉田さんは「制度について知らない人も多く、人助けにすら経済格差が生じてしまっているのではないか」と疑問を口にする。
※下記リンクより、一部抜粋。続きはソースで
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190814-00010000-huffpost-soci
Source: アルファルファモザイク
【悲報】痴漢容疑者にタックルして捕まえた際に膝をねんざした元アメフト部の吉田圭さん「治療費が大変。税金で補償を」